1984年から2010年において、日本人の自尊感情は低下している
●教育心理学研究 2015年03月
日本では、特に児童期・青年期において、自分自身を基本的に良い人間、価値ある存在だと感じる、いわゆる自尊感情が諸外国に比べて低いことが指摘されている。しかも、その自尊感情が年々低下している可能性があるという。しかし、このことはこれまで実証的には検証されてこなかった。 そこで、1980年から2013年までに日本で刊行された主要な心理学査読誌において、自尊感情を測定するために最も頻繁に用いられた尺度を系統的に収集し、その平均値が分析された。その結果、どの年齢段階(中高生・大学生・成人)でも、1984年から2010年において、日本人の自尊感情は経時的に低下していることが明らかとなったのである(下図参照)。 アメリカにおいては、自尊感情は中学生から大学生までどの年齢段階でも、1988年から2008年において、増加していることが示されている。なぜ、日本では、アメリカと異なり、自尊感情は低下しているのだろうか。さらに、近年の日本では、子どもの自尊感情を高めようとする教育実践・教育施策が積極的に行われているが、こうした教育実践・施策は効果的に機能しているのだろうか。こうした点を解明するために、今後も実証的な研究が進められることが期待される。 出典:小塩真司・岡田涼・茂垣まどか・並川努・脇田貴文「自尊感情平均値に及ぼす年齢と調査年の影響―Rosenbergの自尊感情尺度日本語版のメタ分析―」『教育心理学研究』62巻4号、2014年、273-282頁。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjep/62/4/62_273/_article/-char/ja/)(報告者 京都大学大学院教育学研究科 研究員 荻原祐二)