障害特性がストレスと関連している可能性

●Journal of Intellectual Disabilities 2007年12月

 自閉症スペクトラム障害(以下ASD)は、対人相互性の欠如(例:他者の感情理解の難しさ、非言語的意図が読み取れない)と限局された行動およびこだわり(例:急な予定変更に対応できない)を主な特徴とする障害です。近年、ASD者の不安感の高さに注目が集まっていますが、それらに関する研究は多くありません。また、彼らの不安感が高いということは一致して報告されているものの、不安を感じる対象や原因は明らかになっていません。本研究では、ASD者の不安感の原因について、ストレスという観点で調べています。 この研究では、知的障害を伴う18歳から56歳の自閉症者34名(ASD群)と、年齢・性別・IQをマッチしたコントロール群(CON群)を対象に、彼らの不安とストレスについて調べています。彼らの不安感の測定は、SCAS-p(Spence, 1999)という39の質問項目で構成されている質問紙を、またストレスの測定は、The Stress Survey Schedule(SSS: Groden et al ., 2001)という49項目で構成される自閉症者および知的障害者のストレス測定を目的とした質問紙を使用しました。 その結果、以下の2つのことが明らかになりました。1つ目は、ASD群の不安感が有意に高いことが明らかになりました[1]。つまり、児童を対象とした先行研究と一致して、成人ASD者においても不安感が高いことが示されました。2つ目は、この2群にはストレス源に明らかな違いがあり、ASD群においては、変化への対処や、予期、感覚刺激や不快な出来事が不安感と関連していることが示されました。つまり、ASD者特有のストレス源がある可能性と、それらは障害特性に関連している可能性が示唆されました。ASD者の不安の原因を探ることは、彼らの不安を軽減につながることはもちろん、彼らの二次障害の予防につながると考えられます。 出典:Gillott Alinda. “Levels of Anxiety and Sources of Stress in Adults with Autism.” Journal of Intellectual Disabilities, Vol. 11, No. 4, 2007, pp.359-370. 註
[1] 特に、下位項目のうち、パニック発作・広場恐怖症、分離不安障害、強迫性障害、全般性不安障害の得点が高いことが明らかとなっています。

(報告者 発達障害研究推進機構 研究員 伊勢由佳利)