第3条 学校教育法第6条本文の規定にかかわらず、公立高等学校については、授業料を徴収しない。ただし、授業料を徴収しないことが公立高等学校における教育に要する経費に係る生徒間の公平の観点から相当でないと認められる特別の事由がある場合は、この限りでない。
法律によると「教育に要する経費に係る生徒間の公平の観点から相当でないと認められる特別の事由がある場合」は授業料を徴収することができるわけですが、実際の制度運用において、標準修業年限を超えた生徒の授業料についてどのように対応しているのかは学校設置者(地方公共団体)によってその状況は変わってきます。 公立高校の授業料については、各地方公共団体の条例によりその取り扱いが規定されていますが、「教育に要する経費に係る生徒間の公平の観点から相当でないと認められる特別の事由がある場合」については以下に取り上げた例のように、条例上で詳細を規定しているものもあれば、そうでないものもあり、各地方公共団体により様々です。 【授業料に関する条例の例】東京都立学校の授業料等徴収条例 附則第2項第2号 (法律の規定する特別の事由がある場合として) 都立高等学校等に在学した期間が、全日制の課程、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部にあつては通算して三十六月を超える者、定時制の課程及び通信制の課程にあつては通算して四十八月を超える者。ただし、当該各期間を超える者のうち、修学状況その他の事情を考慮して東京都教育委員会が定める者を除く。
鳥取県県立高等学校授業料等徴収条例 第2条 前項の規定にかかわらず、当分の間、県立高等学校の生徒に対しては、専攻科の生徒その他規則で定める者を除き、授業料を徴収しない。
鹿児島県立高等学校授業料等徴収条例 第2条 県立高校に在籍する生徒(以下「生徒」という。)については,授業料を徴収しない。ただし,専攻科の教育を受ける生徒(以下「専攻科在籍者」という。)については,在学中出席の有無にかかわらず,年額118,800円の授業料を徴収する。
実際、各都道府県が標準的な修業年限を超えて在学している生徒にどのような対応しているのか、各都道府県教育委員会に電話調査を行い、その結果をまとめたものが以下の表です(2011年11月現在)。 この表で示すように、現状では、標準的な修業年限を超えて在学する生徒に対し授業料を徴収しない県の方が多いようです。しかしながら、原則として授業料を徴収するとしている地方公共団体であっても、標準的な修業年限を超えて在学する生徒のほとんどがやむを得ない理由がある場合に該当し、実質的には授業料を徴収していない場合も少なくないようです。また、やむを得ない理由がある場合に該当しないとされても、都道府県の授業料減免制度の対象となり、結果的には授業料を徴収しないということもあります。 標準的な修業年限を超えて在学する生徒の授業料について、現状の制度は以上のようになっています。ただ、江上(2010)の大阪府立高校教員宛てのアンケート調査で、自由記述において「安易な原級留置を選択する生徒・家庭が増えた」と述べている教員がいることからも分かるように、標準的な修業年限を超えて在学する生徒の授業料を原則不徴収とする場合において教育上マイナスの影響がでる可能性も否定できません。始まってまだ間もない制度ですが、その在り方については今後とも検討していく必要があるといえるでしょう。