※1 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/004/1301847.htm
更新講習の内容は、①教職についての省察並びに子どもの変化、教育政策の動向及び学校の内外における連携協力についての理解に関する事項、②教科指導、生徒指導その他の教育の充実に関する事項の2つに分けられています(免許状更新講習規則第4条)。講習受講者は、①の内容について12時間以上、②の内容について18時間以上の講習を受講し(2008年文部科学省告示第50号)、講習の開設者が実施する試験に合格することで修了認定を受けることができます。その後、各教員が所在する各都道府県の教育委員会(免許管理者)に更新講習修了確認の申請を行うことで、免許状の更新が行われます。 この更新講習修了確認の申請を行わず、修了確認期限を経過すると、免許状が失効してしまうことになります。免許状が失効してしまった教員の数としては、文部科学省が2011年6月に行った調査によると、2011年3月31日が修了確認期限であった94488名(国立565名、公立82928名、私立10995名)のうち、98名(国立2名、公立47名、私立49名)の免許状が失効したと報告されています。また、都道府県別の内訳は以下の表のようになっています。※文部科学省「免許状更新講習の修了確認状況等に関する調査」2011年 (http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/012/__icsFiles/afieldfile/2011/08/05/1309370_2.pdf [最終アクセス2012年1月30日])をもとに著者作成。
それでは、免許状が失効してしまった場合、その後その教員はどうなるのでしょうか。Benesseの調査によると(※2)、①失職し学校を去るケース、②教員免許を必要としない職に配置転換されるケース、③そのまま管理職として職を続けるケース(校長・副校長・教頭は必ずしも免許状を有することが必要でないため)、④臨時免許状を有していたため助教諭として職を続けるケース、⑤講習自体はすべて修了していたため4月になってすぐに免許状が再交付され職を続けるケースがあると報告されています。※2 http://benesse.jp/blog/20110519/p2.html
更新講習修了確認の申請をせずに免許状が失効した場合については、以上の5つの場合が考えられます。ただ、筆者が東京都教育庁へ電話にて問い合わせたところ、・東京都における公立学校の免許状失効者8名のうちほとんどが「講師」。 ・免許状の更新手続きがもとで失職した「教諭」はいない。 ・全員が講習は修了しているものの申請手続きをしていないだけであった。 ・教職を続けるものについては、4月1日付けで免許状を再交付した。
との回答をいただきました。この東京都の事例に鑑みると、免許状の更新手続きがもとで「教諭」が失職または配置転換となる例は極めて少数であり、免許状の更新手続きがもとで失職となった教員についての多くが「講師」であると推測できます。 しかしながら、更新講習修了確認の申請をしなかった教員のうち期限前に辞職したため免許状が失効しなかった教員も全国で492名おり、免許状の更新手続きがもとで教職から離れた教員は「免許状が失効した教員」とは限りません。詳細なデータが公開されていないため明言はできませんが、免許状の更新手続きと失職との関係は「講師」だけでなく「教諭」にも大きな影響を与えているかもしれません。ちなみに、熊本県では、それらの教員も含めて「教員免許失効者等特別選考」を行い、免許状の更新手続きがもとで教職から離れた教諭を再任用した事例もあります(※3)。※3 読売新聞「特例で教職復帰試験 6人全員合格 県教育長「今回限りの措置」」西部朝刊、31頁。
今回の記事では、「免許状が失効した教員」に焦点を当てて教員免許更新制を紹介しました。教員免許更新制については、既に研修内容や受講手続き等の様々な観点から是非が論じられていますが、こうした更新修了後の結果についても分析がなされていく必要があるといえるでしょう。