アイコンタクトは人を説得しにくくする
●Psychological Science 2013年11月24日
子どもを叱るときに、話を聞くときは目を見なさいという言葉をよく耳にします。みなさんはアイコンタクトが説得に役立つと考えているでしょうか。確かに、相手を見ながら話す人は第3者から説得力があり好ましいと評価されます。しかし、この研究では、話を聞く人が話者の目に注意を向けている場合には説得されにくくなるということが示されています。 この研究では次の2つの実験がおこなわれました。1つめは、参加者に様々な議題について他者が意見を述べている映像を見せ、映像視聴中の眼球運動を測定するというものです。もう1つは、意図的に話者の目か口を見てもらうことを指示し、参加者と反対の意見を述べている映像を見てもらうというものです。この2つの実験では、映像視聴前後の参加者の議題に対する態度を測定し、比較しています。 実験の結果、次の3点が明らかとなりました。1つめは、参加者の意見がもともと話者と近い場合には、話者の目を長く見るということがわかりました。しかし、2つめとして、参加者が話者の目を長く見ているほど、参加者は話者の意見へと変化しにくくなるということが示されました。この抵抗の程度は参加者の事前の態度が話者の意見と食い違う場合により大きくなっていました。さらに、3つめとして、参加者に話者の目を意図的に見てもらった場合でも、口を見てもらうより、話者の意見へと変化しにくくなっていることが明らかとなりました。つまり、これらのことから、アイコンタクトは人を説得しにくくするという結論が導き出されたのです。 アイコンタクトは一般に協調的な行動に欠かせないものなのですが、説得のような影響力の行使や支配と結び付けられる文脈では他者への抵抗が動機づけられる可能性があります。私たちが説得している相手が目を見ているかどうかを観察することによって、説得がうまくいっているかどうか知ることができるかもしれません。 出典:Chen, F. S., Minson, J. A., Schöne, M. and Heinrichs, M. “In the Eye of the Beholder: Eye Contact Increases Resistance to Persuasion.” Psychological Science, Vol. 24, No. 11, 2013, pp. 2254-2261.(報告者 特定非営利活動法人 発達障害研究推進機構 魚野翔太)