米作地域の人々は麦作地域の人々よりも集団主義的である

●Science 2014年5月9日

 これまで、生業形態が人々の心理・行動傾向に与える影響について研究が行われ、農耕は集団主義を、牧畜は個人主義を促進することが示されてきた。しかし、農耕の対象である作物の種類の違いについては検討されていなかった。米作は、継続的に水を供給する灌漑システムの作成・整備が必要であるため、麦作と比べて労働の手間が多く、周囲の人々との協力の必要性も高い。それゆえに、米作地域の人々は他者や集団に対してより注意を払う必要があり、包括的な認知傾向を持ち、集団主義的になると予測される。 調査は、中国28省に住む人々1162名を対象に実施され、以下の3つの課題を対象者に行ってもらうことで、人々の認知傾向と集団主義傾向が測定された。1点目は、共通の特徴に基づく分類を行う(例:電車とバス)か関係性に基づく分類(例:電車と線路)を行うかという分類課題、2点目は、自分と自分の友人を円を用いて描写するソシオグラム課題、3点目は、友人と見知らぬ人の成功・失敗に対して報酬と罰をどの程度与えるかを答える課題であった。 その結果、予測と一致し、米作を行っている地域の人々は麦作を行っている地域の人々よりも、関係性に基づく分類を行い、自己を小さく記述し、友人に対して罰よりも報酬をより多く与える傾向があることが分かった。つまり、米作を行っている地域の人々は麦作を行っている地域の人々よりも、包括的な認知傾向を持ち、集団主義的であることが明らかとなった。 出典:Talhelm, Zhang, Oishi, Shimin, Duan, Lan & Kitayama. “Large-Scale Psychological Differences within China Explained by Rice versus Wheat Agriculture.” Science, No.344, 2014, pp.603-608.( http://www.sciencemag.org/content/344/6184/603.short

(報告者 京都大学大学院教育学研究科 博士後期課程 荻原祐二)